クレジットカードの情報や銀行の口座情報など、私たちの情報はネットで管理するのが主流になりつつあります。
スマホさえ持っていればいつでもどこでも情報が確認でき、電子マネーで決済をすることも可能。
便利な世の中ですが、これは相続という視点から見るとかなり厄介な問題が潜んでいるのです。
この記事では、これらのデジタル資産の相続に関しての注意点や事前にできる準備についてご紹介します。
円滑な相続ができるよう、参考にしていただければ幸いです。
デジタル資産とは
デジタル資産とは、その名の通り電子上でデータとして管理しているもの全てを指します。
仮想通貨や銀行口座の情報、電子マネーなどは私たちの生活にもだんだんと溶け込んできていますよね。
これまでの相続では通帳や証券会社の取引明細、土地の権利書など、紙の媒体で資産を確認することがほとんどでした。
自宅や銀行の貸金庫など、大切なものは鍵のかかる場所で管理するのが主流でしたよね。
しかし現在、大切な情報の多くがスマホ1台で管理できる時代になっています。
また、個人の活躍の場がSNSなどに拡大しているため、データ化された文章や絵などもそデジタル資産に含まれることがあるんです。
現金や有価証券等のお金だけでなく、データも大切な資産。
故人が残してくれた大切な資産をしっかり受け継ぐために、しっかり準備しておきましょう。
デジタル資産の相続は法律化されていない
日本では法整備が追い付いていない
デジタル資産の相続問題が急速に増えてきたのは、ここ最近のことです。
そのため日本ではデジタル資産の相続の法整備が現状追い付いていません。
例えば、デジタル資産を保有する故人が遺言を残していたとします。
しかし、遺言の中にデジタル資産の内容は明記されず「その他一切の財産」と記されることがほとんどです。
法律上の「物」とみなされる有形物には所有権という考え方が用いられるのですが、デジタル資産は無形物です。
そのためデジタル資産の権利そのものに対しては、どうしても不明確な点が多く残ってしまうのですね。
今後整備が進んでいく可能性も高いですが、現状はケースバイケース。
自身で情報を管理しておくことが何よりも大切ということですね。
欧米では法律化されている国も
米国では2011年頃からデジタル資産の相続に関しての議論が活発化。
2014年7月には「デジタル資産の相続に関する法的な基準(Fiduciary Access to Digital Assets Act)」を制定しました。
その後各州で議論が進められ、現在では46州でデジタル資産の相続に関する法整備が行われたのです。
日本でも、遺言が遺されていない場合は法律の専門家の手を借りることも多いです。
そのため事前に対策をしておくことがとても大切です。
このような観点からも、法整備が早急に進められているといえるでしょう。
欧州ではデータ保護の整備が進む
一方、欧州各国に目を向けるとデジタル資産のデータに関する個人情報の保護は強化されているようです。
しかし、相続となると各国の対応に任せている状況。
フランスでは2016年に「Digital Republic bill(デジタル共和国法案)」を公布しています。
デジタル資産に関する総合的な法律で、故人のオンライン上の資産が適切に保管されるよう定められているのです。
デジタル先進国のエストニアでは、より具体的に法整備が進められています。
「データ保護法」によってデジタル資産の持ち主の死後30年は本人の意思が有効と定められています。
米国、欧州ともに大枠しか定められていませんが、エストニアではより具体的に定められているんですね。
しかし、どの国もSNSなどのオンラインサービスが定める利用規約が先立っています。
相続を認めないという規約があるサービスは、いくら国の法律が定められていてもそのサービスの規約に則ることになっていますので、実用性に関しては疑問が残るところですね。
デジタル資産相続の問題点
IDやパスワードがわからない
デジタル資産は、電子上で管理するものです。
大切な情報が盛りだくさんですので、情報にアクセスするためのIDやパスワードで管理していることがほとんど。
しかし、大切な情報だからこそ本人しか知らないということも少なくありません。
IDやパスワードが分からなければ肝心の資産内容は分からず、それが分からないと相続手続きが長引いてしまう可能性もあります。
IDやパスワードは情報の機密を保持してくれますが、相続となると話は別です。
しかも、中にはパスワードが分からなくても相続税の対象になるものも。
対処できなくなる前に、然るべき準備をしておきましょうね。
そもそも存在を知らない
IDやパスワード以前に、デジタル資産の存在自体を知らないという問題も多いです。
特に投資信託や株、仮想通貨などは家族に内緒にしている場合も多いでしょう。
以前は自宅に送られていた取引明細も、最近はペーパーレス化が進みネット上での確認が主となっています。
この仕組みは日頃の取引内容が家族に知られずに済む点はメリットなんですよね。
しかし、相続が発生してしまうと状況は一転。
特に大きな金額を投資していた場合、相続税の計算にも影響してきますので注意が必要です。
デジタル資産相続の注意点
デジタル資産の相続は近年急速に社会問題になってきているもの。
この分野に詳しい専門家が少ないのも事実です。
そんな中、私たちが注意できることを2点ご紹介します。
相続税の対象になることもある
デジタル資産は、相続税の対象になることもあります。
特に投資信託などの有価証券。
現在はネット銀行やネット証券も存在するので、通帳や取引明細など紙媒体のものが全く存在しない有価証券も存在します。
このような有価証券に多額の投資をしていた場合、相続税の計算に影響を及ぼすことも考えられますよね。
相続税の支払いは、故人が亡くなった翌日から10ヶ月の間に行わなければなりません。
それ以降に対象の資産が見つかった場合、面倒な相続手続きをもう一度しなければなりませんし、税額も変わってきます。
相続税というものはなるべく減らしたいもの。
思わぬ支払いが発生しないよう、日頃から管理と準備をしておくことが大切ですね。
仮想通貨やFX等の場合、知らない間に損をする可能性も
仮想通貨やFXは、資産の中でも短期間での値動きが大きいもの。
故人がこういった資産を保有していたことを知らずに時が過ぎると、値動きにより大きな損失に繋がる可能性もあるのです。
しかもFXの場合、遺族に対して追加証拠金の支払いが請求されたというケースも発生しています。
相続によって故人が遺してくれた資産を受け継ぐはずが、準備をしていなかったためにむしろ支払いが生じてしまうことだってあるということですね。
こういった不測の事態を防ぐためには、自身で管理できる間に解約をしておくか、何かにアカウントやパスワードをまとめておくことです。
値動きの大きい資産への投資は、万が一のことも考え計画的に行いましょうね。
SNSのアカウントはどうなる?
故人のアカウントは各SNSの規定による
故人のアカウントが相続の対象になり得るかどうかは、各SNSの利用規定によって定められています。
しかし、現状ほとんどのSNSではアカウントの相続は禁じられており、相続の対象とならない場合が多いようですね。
Instagram、Facebookは追悼アカウントに
Instagram、Facebookにおいて、故人のアカウント自体は残しておきたいという場合、「追悼アカウント」として残しておくことが可能です。
有名人が亡くなった場合などによくみられるケースですね。
追悼アカウントの申請には特に制限はありません。
Instagramでは、追悼アカウント申請の専用フォームが存在します。
氏名、メールアドレス、亡くなった方の氏名、亡くなった方のInstagramユーザーネーム、亡くなった日付を入力。
さらに死亡を証明する書類を添付することによって追悼アカウントリクエストが可能です。
書類といっても、正式なものだけでなくニュース記事などの添付で可能なようですよ。
デジタル資産相続のために準備しておきたいこと
デジタル資産リストの作成
デジタル資産は、アナログ媒体でIDやパスワードを管理しておきましょう。
特にオススメなのが、「エンディングノート」です。
最近では、デジタル資産を書き込んでリストにできる形のものも販売されています。
葬儀の希望や家族へのメッセージとともに、デジタル資産についても書き記しておきましょう。
IDやパスワードも記しておくと、亡くなった場合だけでなく認知症や病気になってデータへのアクセスが難しくなった場合にも有効です。
相続手続きは時間も労力もかかり、とても大変です。
ご遺族の負担を少しでも減らすため、生前にできる準備はしておくと安心ですよ。
SNSは事前に追悼アカウントの設定申請も可能
例えばFacebookでは、事前に自らの死後は追悼アカウントに移行するよう申請しておくことが可能です。
そのためには、自らの死後追悼アカウントの管理人を設定しておく必要があるんです。
また、その他にも遺言に死後のSNSアカウントの管理について明記しておく方法や、管理を任せたい人物と死後委任契約を締結しておく方法が挙げられます。
これらの方法で準備をしておくと、大切なアカウントを適切に管理してもらうことができますよね。
デジタル資産整理サービスも登場
オススメ業者①メモリーズ
こちらは遺品整理や特殊清掃等、突然の死で困ってしまう手続きを一任してくれる業者です。
デジタル資産は、故人のスマホやパソコンに残されていることがほとんど。
個人情報が厳重に管理されている昨今、スマホやパソコンにパスワードを設定していることも多いですよね。
そのため、これらのパスワードを解除してくれるサービスも含まれます。
近親者といえど、個人のプライベートな領域にはなかなか踏み込めないですから、こういったサービスはプロにお任せできるとありがたいですね。
こちらは関西・中国・東海・北陸地方の遺品整理に対応してくれます。
メモリーズ公式HP:https://www.ihin-memories.com/
オススメ業者②DDF
DDFはデジタル遺品専門業者です。
金融資産にまつわる情報からSNS、ブログ、写真やアドレス帳などの情報を全て調査してくれます。
こちらは個人顧客だけでなく、弁護士や遺品整理業者、警察の捜査関係者も頼りにする業者ですので信頼度が高い点が魅力ですね。
データ復旧実績が16万件を超えていながら、情報漏洩が1件も発生していません。
DDF公式HP:https://www.ihin-memories.com/
オススメ業者③Sebco
Sebcoは、「ここが知りたい!デジタル遺品」の著者でデジタル死生ライターの古田雄介氏監修のデジタル遺品終活サービスです。
月額料金制で、自身の遺したい情報をクラウド上で管理できるこのサービス。
法整備が進んでいない日本だからこそ、自分で自分の情報を守るということですね。
万が一近親者に見られたくない情報がある場合は、そちらは死後に適切に処理してくれます。
特にSNSアカウント等は隠しておきたいものもあります。
そういった場合に近親者にすべてが発覚してしまう恐れがないので、プライバシーを守りたいという方にはピッタリですね。
Sebco公式HP:https://secbo.jp/
まとめ
デジタル資産の相続は法整備が進んでない今、自分で準備をしておく必要があります。
遺品整理サービスに事前にお願いをしておく、遺品整理ブックに各資産の情報をまとめておくなどがその対策に当たります。
しかし、いくら近親者といえどもプライバシーは守りたい。
自分の死後とはいえ、全てをさらけ出されるのは少しはばかられる。
そういった場合は、自分の死後に適切な処理をしてくれる業者にお願いをしておくのが安心ですね。
今後欧米にならって法整備が進むことも考えられますが、「自分の資産は自分で守る」ことが基本中の基本。
有形資産、無形資産ともに自身で確り把握して管理しましょう。
大切な人が相続の手続きで苦労しないよう、できることはしておきましょうね。
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