親が死亡したら借金は肩代わりしないといけない?

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親の借金は子供が返さないといけない?相続制度

親に借金があった!?
親が死亡してからその事実がわかって愕然とすることがありますよね。
そんなときにはどうすればいいのか・・・。
今回は「親が死亡した」場合に焦点を絞り、疑問にひとつひとつお応えしていきます。

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相続方法の種類と選び方

親の借金は子供が返さないといけない?

まずは結論。
借金を肩代わりしなければならないわけではありません!

親が死亡したときに発生するのが相続ですが、相続というのは遺された家族の権利であって義務ではありません。

親が作ってしまった借金を相続しなくてもいいんです!!

ただし、適切な対処をしなければ全額肩代わりしなくてはならなくなってしまいます。
では、どうやったら借金を肩代わりしなくてもすむようになるのか・・。
親の借金を肩代わりしなくてすむ方法について、これから説明していきたいと思います。

相続の方法は3つ

相続方法には、「単純承認」「相続放棄」「限定承認」という3つの種類があります。

単純承認

法律に従った相続分(法定相続分)を全て相続することを「単純承認」といいます。
この方法は特に手続きをする必要のない方法で、通常はこの方法で相続が開始されます。
「単純承認」してしまうと、借金を全て肩代わりすることになりますが、借金完済後に財産が残った場合、その残った分を手に入れることができます。

例えば、相続財産が1000万円で借金が600万円だった場合、残った400万円を相続できることになります。

親に借金はあるけれど、親の貯金や持ち家を売ったりすればお釣りが出るな・・といったような場合は、この「単純承認」の方法で相続をすると、「お釣り」部分を手に入れることができるという訳です。

相続放棄

全ての相続の権利を放棄することを「相続放棄」といいます。
家庭裁判所へ申述(申し立てること)をして受理されれば、晴れて相続から解放されます。
家庭裁判所で受理をされると「相続放棄申述受理証明書」という書面が発行されますので、大事に保管しておいてください。
親の債権者(借金取り)から支払いを請求されても、この「相続放棄申述受理証明書」の写し(コピー)を提示すれば、以後、取り立てを受けることはなくなります。
「相続放棄」をした場合、借金完済後に残った財産があったとしても、それを相続することはできません。

例えば、相続財産が1000万円で借金が600万円だった場合、残った400万円を相続するこはできません。

「借金が多いから親の貯金や持ち家を売ってもどうせ何も残らないだろう・・」と思って放棄をしたものの、「お釣りがでた!!」という場合、その「お釣り」を手に入れることは一切できなくなってしまう訳です。

一度相続放棄の申述をしてしまったら、後から「やっぱり、放棄、やめます!!」と言って撤回できません。

よく考えてから申述してください。

限定承認

相続人が相続によって得た財産の限度だけを相続することを「限定承認」といいます。
親の借金が1000万円あるけれど、親が遺した借金以外の財産が600万円であった・・というような場合、600万円を超える400万円の部分は相続しなくていという相続方法となります。
そして、もし、相続財産の中に不動産がある場合は、不動産の価額分を返済に当てて返済すれば不動産を残しておくこともできます。
また、借金の額よりも相続財産が多く、借金を返済しても残額が出るような場合など、残った部分を相続することも可能になります。
上記でも説明したように、放棄をしてしまうとたとえ後からプラスの財産が見つかっても相続することはできません。

「限定承認ってなんだかメリット多くない??」
「この方法にすればいいんだ!!」と思いますよね。

でも、かなり面倒でデメリットが多い方法であることも事実であり、実際にこの方法を選択するケースは極めて稀のようです。

「限定承認」の場合も「相続放棄」と同様、家庭裁判所に申述(申し立てること)をする必要があります。
しかし、「相続放棄」の場合は放棄をしたい相続人が単独で申述をするだけで良かったところ、

「限定承認」の場合は、

  • 相続人全員で申述をしなければならない
  • 財産目録を作成して家庭裁判所に提出しなければならない
  • 清算手続きをしなければならない
  • 税金が余計にかかる可能性がある

といった負担があり、3つの相続方法の中で最も難しい相続の方法になります。

【事例別】相続方法の選び方

借金はあるけれど返済した後に手元に残る財産がある場合

この場合は、「単純承認」を選択するのがいいかと思います。
複数の借入先があった場合等、返済の作業は楽ではないかもしれません。
それでも、残った財産を受け取ることができるのは大きなメリットです。

借金の額が多くて返済した後に財産が残らない場合

この場合は、「相続放棄」を選択する方がいいと思います。
相続放棄をしないと、相続財産で支払いきれなかった分を自腹を切って返済しなければならなくなります。
親の借金を肩代わりする必要がなくなるというのは大きなメリットです。
また、相続放棄をすれば相続そのものから離脱することになりますので、財産調査や債権者への返済など、とても手間のかかる作業から解放されるというメリットもあります。
ただし、借金を返済した後に財産が残った場合、その残った財産を手に入れることは一切できませんので、注意が必要です。

借金を返済した後に財産が残るかもしれない・・
借金の方が多いけど、今住んでいる家は手放したくない・・という場合

この場合は、「限定承認」を選択した方がいいかもしれません。
ただし、前述したようにこの相続方法は中々難しいですし、手続きが完了するまでにかなりの期間を要します。
また、不動産相当額については自身で現金を調達しなければならないという問題点もあります。
十分に検討して、ご選択される方がいいかと思います。

相続方法を選べなくなる場合と選ぶ期限

相続方法を選べなくなる場合

うっかり相続財産にあたるものを受け取ってしまったら、「単純承認」したものとみなされて、「相続放棄」や「限定承認」ができなくなってしまう場合があります!

相続放棄や限定承認をしようかな・・と考えている場合、親が死亡した後に支払われるお金の受け取りには十分な注意が必要です。

例えば、生命保険の死亡保険金の受け取りについて。
親の死亡保険金を受け取る場合、受取人が死亡した親自身と指定されている場合、親の財産となるため、これを受け取ると単純承認」をしたものとみなされてしまいます。
受取人が死亡した親以外に指定されている場合は、その指定された個人の財産となりますので、たとえ相続放棄をするとしても受け取って全く問題ありません

保険金支払いの請求をする場合は、受取人に誰が指定されているのかを十分確認して、手続きを行うようにしましょう。

相続方法を選ぶ期限

相続が始まっても、親の財産の状況なんてわからないし、借金があるのか、あるとしたらどれくらいなのか見当もつかない・・・と焦ってしまうと思います。
でも、安心してください!

すぐにどの方法で相続をするのか、急いで結論を出さなければならないわけではありません。

自分に相続権が発生した、ということを知ってから3ヶ月の間は、手続きを進めずにじっくりと被相続人の財産を調査したり、どの方法で相続しようか考えたりすることができます。
この3ヶ月の期間を熟慮期間といいます。
熟慮期間の間に相続財産にあたるものを受け取ってしまったら、「単純承認」をしたものとみなされて「相続放棄」や「限定承認」ができなくなってしまいます。

自分に相続が発生した!ということがわかったら、財産を受け取る前に、まず親の財産状況を確認しましょう。

この期間の間に、「相続放棄」をするのか、みんなで「限定承認」をすべきなのか、しっかりと検討し納得した上で相続手続きに入ってください。

熟慮期間を過ぎてから放棄・限定承認をすることはできません。
でも、この3ヶ月の間にどうしても決められない場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立」をすることで熟慮期間を伸長することができます。
伸長される期間は、申立人によって裁判所に判断されますので、熟慮期間が過ぎてしまいそうなときは、迷わず家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立」を行いましょう。

相続できる人の範囲と相続財産の分配方法

相続できる人は誰なのか。
これは法律で明確に定められています。
この法律で定められた相続人のことを、法定相続人といいます。

あなたが全てを相続できるわけではありません。

相続人が複数人いる場合、自由な割合で分配することができますが、相続人全員が納得しなかった場合などは法律に定められた割合に従って分配されていくことになります。

親が死亡した時に相続できる人の範囲

親が死亡した場合の相続人は、親の配偶者と子供です。

誰が相続人になるかについては法律で定められた範囲があり、その範囲を超えて相続されることはありません。
父親が亡くなった場合、相続人になるのは母親と子供です。
母親が既に亡くなっている場合は、子供だけが相続人になります。
ここで注意が必要なのは子供達の扱いです。
例えば、父親の戸籍には入っていないけれど、認知した子供が他にもいる場合、離婚歴のある親が前に結婚していた相手との間に子供がいる場合、すべての子どもたち平等に相続権があります
そのため、死亡した親が生まれてから死亡に至るまでの戸籍をすべて集め、相続関係を確定していかなければなりません。
転籍(本籍地を変更すること)を繰り返していたり、結婚・離婚を繰り返していたり・・そういった親が死亡した場合、戸籍が日本全国各地に散らばっている場合があります。
また、死亡した父親に認知した子前妻との子がいるような場合、その子の現在の戸籍まで取得する必要もあります。
こういった込み入った戸籍の収集には数ヶ月かかる場合もあります。

相続財産の分配方法

第一に優先されるのは死亡した親の意志、つまり遺言です。
次に、相続人全員の合意によって決めることもできます。
遺言もなく、相続人全員の合意が成立しなかったような場合は、民法の規定に従った割合(法定相続分)で分配されることになります。

遺言がある場合

第一に優先されるのは死亡した親の意志です。
遺言によって意志表示された相続分のことを「指定相続分」と言います。
原則的に遺言に記載された通りに分配されます。
しかしながら、遺言で禁止されたような場合を除き、相続人全員の同意があれば遺言通りに分配しなくても構いません。
そして、もし遺留分(法定相続分の2分の1)を侵害されている相続人がいた場合、遺留分侵害請求を行うことによって侵害されている額に相当する金額の支払いを請求することもできます。

遺言がない場合

相続人全員の協議により分配方法を決め、その協議内容に則って分配することができます。
協議内容は「遺産分割協議書」として書面にする必要があり、各相続人の実印を押印しなければなりません。
そのため、印鑑登録を行なっていない場合はまず市役所等で登録手続きを行っておく必要があります。
死亡した親の銀行口座の解約や不動産の名義書換等、財産を分ける行為を行うためにはこの「遺産分割協議書」の原本相続人全員分の印鑑証明書が必要になります。

遺言がなく、相続人全員の合意も成立しない場合

民法の規定に則って分配していくことになります。
前述したように、親が死亡した場合、相続人になるのは親の配偶者と子供です。
父親が死亡した場合、母親が2分の1、子供が2分の1を相続します。
子供が複数人いる場合は、2分の1を子供たち全員の数で平等に分けます。
例えば、母親が生きていて子供が3人いる場合、母親が2分の1、子供達がそれぞれ6分の1づつを相続することになります。
遺言がなく、相続人全員の合意も成立しないような場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停の申立」を行い、裁判所の調停委員2人の立会いのもとで話し合いを進めていきます。

裁判所を通して話し合いをすると公平で間違いのない分割内容になるようなイメージもあるかもしれませんが、必ずしも納得のいく結果になるとは限りません。
また、結果が確定するまでに平均2年ほどの期間を要し、場合によってはもっと長期化するようなケースもあります。

揉めずに当事者同士で合意できれば、それに越したことはなさそうですね。

まとめ

親の借金を肩代わりしなくても大丈夫!

「相続放棄」や「限定承認」をすれば借金も相続しない! 
借金を返しても残る財産があるならば、「単純承認」で大丈夫!!
まずは落ち着いて親の財産状況を調べることから始めましょう。 
そして、「親が亡くなった!」ということを知ってから3ヶ月以内では結論を出せない・・といったような場合は、家庭裁判所に対して「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立」を行い、じっくり検討していきましょう。 

手続き方法の詳細と申述をする家庭裁判所の管轄(場所)

詳しい手続き方法と申述をする家庭裁判所の管轄(場所)については、下記の裁判所のHPをご確認ください。
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

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